遠州の菓子文化

ハクセッコの様々な形~婚礼と仏事~

菓子勇本店さんの白雪糕

婚礼や仏事の引き出物の箱菓子(式菓子)は、和菓子の横綱ともいわれ、ようかんや練りきりなどで、しきたりに従った形が作られます。

浜松ではハクセッコ(ラクガン)が多用された時期があります。ヒキガシとかミツモリといって、慶弔にあった形のお菓子を三つ詰め合わせるのが基本です。慶事は頭に日の出を置くことが決まりで、下に鶴亀や高砂を置きます。弔事(仏事)は頭に蓮華を置き、下に菊や牡丹の花を置きます。

三河では三ツビキとか五ツビキ、七ツビキと言うそうです。

かつて、静岡県西部(遠江)から愛知県東部(三河)では、箱菓子とは別に、婚礼や仏事の料理(ホンゼン)をハクセッコでかたどって引き出物とすることが行われました。

これをお菓子屋さんによっては、ダイビキと呼ぶようです。第二次世界大戦以前からあったようですが、浜松では昭和30年台から40年台、特に盛んだったようです。

大石屋製菓舗さんの平ぱんハクセッコで婚礼や仏事の料理をかたどって引き出物とすることが、昭和40年台くらいまで行われていたと言いました。実は婚礼のサラモリは早くすたれ、仏事のオヒラ、オツボが後まで続いていたことが、どのお菓子屋さんの話にも共通します。亡くなった人の魂を供養するという、婚礼以上に精神性の強い儀礼を行なうために、しきたりが変わる速度は遅かったのでしょう。

葬式に先立つ食事に、ヒリューズやアブラゲを必ず使う風習は、関西地方を中心に広く行われていました。もちろんハクセッコのオヒラにも、ヒリューズは欠くことはできませんでした。

ところで、オヒラパンあるいはカタパンという葬式に引き出物が、第二次世界大戦以前から、浜松市内から磐田市にありました。オヒラパンの名の通り、これもヒリューズをかたどっています。
また、オヒラマンジュウと言って、ハクセッコのオヒラがすたれた後に、マンジュウでヒリューズをかたどっている地域もあります。

※浜松ものづくり展「和菓子をつくる」より引用

和菓子と年中行事~季節の和菓子~

柏餅とちまき
五月、端午の節句の代表的なお菓子です。浜松では、初節句に巨大な柏餅が製作されることもあります。ちまきは、中国伝来の食品ですが、餅を蒸した菓子としても利用されます。雛祭りの菱餅、二月の節分のなた餅など、季節の行事は独特の菓子ともかかわっています。

桜餅
桜の葉を巻いた個性的な菓子で、東日本を中心に餅で餡をくるんだものと、西日本中心の道明寺粉でくるんだものがあります。浜松ではどちらも見られます。なお、この桜葉の塩漬けは、静岡県伊豆半島の特産品です。

はなびら餅
宮中の正月行事の餅を小型化したお菓子。ごぼうが入っていることが特色で、茶道の正月行事を中心に、近年は浜松にも広まっています。

季節の干菓子
砂糖を利用した小型の菓子。製法はハクセッコと共通します。茶事には不可欠の菓子として需要があります。季節の風景を簡潔に表しています。

なた餅
二月の節分の日、厄年を迎えた人が厄落としのために辻に置いてくる黄な粉餅です。置いたら振り返ってはいけません。

雛菓子
雛祭りのお菓子は、菱餅に代表される桃・白・緑、三色のお菓子です。

月見だんご
仲秋の名月を愛でる米菓子です。浜松付近ではまん中にくぼみをつけた「へそだんご」が見られます。民家の縁側に三宝にのせておかれているだんごは、よその子どもたちが盗み食いしてよいことになっていました。

栗きんとんと栗蒸し羊羹
どちらも秋の到来を知らせる代表的なお菓子です。

※浜松ものづくり展「和菓子をつくる」より引用

お菓子の暦

睦月 迎春 上生菓子・花びら餅・苺大福・ゆず饅頭
如月 節分 厄除団子・なた餅・立春大福・草餅・蕨餅
弥生 桃の節句・彼岸 ぼた餅・菱餅・桜餅・鶯餅・草餅
卯月 花見 花見団子・柏餅・粽
皐月 端午の節句 柏餅(大柏餅)・粽(ちまき)
水無月 夏越の祓い 若鮎・笹麩餅・水無月・葛桜
文月 七夕 若鮎・土用餅・水饅頭・水羊羹
葉月 お盆 水饅頭・水羊羹・白玉汁粉
長月 敬老の日 月見団子・月見うさぎ・おはぎ・芋羊羹
神無月 彼岸 栗蒸し羊羹・栗きんとん・黒豆大福
霜月 七五三 薯蕷饅頭・栗饅頭
師走 冬至 ゆず饅頭・酒饅頭・懐中汁粉

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